【8/7(金)入荷予定】伊勢角屋麦酒 カドラボ039(ISEKADOYA BEER KADOLABO 039)

4,540円(税込4,994円)

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20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。

白ワインを使用したカクテルをビールの素材に置き換えインスパイアしたカクテルインスパイアビア

アルコール:9.0%
IBU(苦さの基準):
種類:カクテルインスパイアビア
容量:750ml
生産地:日本 三重県伊勢市

【ブルワリーより】

KADOLABO 039 French 5³ meets beerは、バーテンダー高橋大地氏のオリジナルカクテル「French 5³」を、ビールの言語に翻訳したビアカクテルだ。
034 Emerald Breezeでは、完成したペールエールにカクテルの要素を足した。今回はその発想を裏返し、カクテルの設計図そのものを醸造の工程に置き換えている。

高橋氏は2023年、パリで開かれたヘネシーのグローバルカクテルコンペティションで世界一に立ったバーテンダーである。その時のカクテルが「French 5³」。ブランデー、レモンジュース、シュガーシロップをシェイクしたものに、スパークリングワインを加えて作るFrench 125をアレンジして開発されたカクテルだ。125を5の3乗に置き換えているところに高橋氏の遊び心が感じられる。

「French 5³」では、French 125がレモンジュースを置く位置に、ラベンダーで香りづけした白ワインが据えられている。ブドウの品種はソーヴィニヨン・ブランとセミヨン。仕上げにビターズを二種、そしてソーダが加わる。詳細なレシピは氏のものであり、ここでは概要の紹介に留めさせていただく。

我々は、この設計図を醸造の側に移した。
白ワインの位置には白ブドウ果汁を、ソーヴィニヨン・ブランの香りの位置にはNelson Sauvinを置いた。この命名は連想ではない。Nelson Sauvinに含まれる3-メルカプトヘキシルアセテート(3MHA)などのポリファンクショナルチオールは、ソーヴィニヨン・ブランのバラエタルアロマを構成する分子と同一のものだ。品種名は比喩ではなく、化学式の一致を指していた。
翻訳できなかったものが、ひとつだけある。ラベンダーだ。

ラベンダーの香りの一つのキーコンパウンドとされているのはリナロールだ。リナロールはホップの香気分析においても1つのキーコンパウンドとされている。しかしながら、そのほかのラベンダーを連想させるアロマコンパウンドは、ホップとは重なっておらず、ホップ品種のブレンドにより、ラベンダーの表現をするのは困難であると考えられた。

ラベンダーそのものを表現することは諦めて、ラベンダーが生み出している香りの役割を代替することを意図して、ISEKADOが保有する野生酵母のフェノール香に、その役割を託した。この酵母がほのかに生むフェノール香は、ラベンダーそのものではない。だがその香草めいた匂いは、白ブドウの酸とコニャックの樽香のあいだに立ち、離れがちな二つを一つの流れにつなぐ。香りの分子をそっくり移すのではなく、その香りが担っていた役割のほうを移す。翻訳とは、そういう仕事でもある。

醸造の設計はこうだ。
ピルスナーモルトのみを用い、100Lを仕込む。
12.2プラートで煮沸を終えた麦汁に、ワールプールで白ブドウ果汁を加える。冷却して木樽に移し、酵母をピッチする。
主発酵はオーク樽の中で行う。伊勢の神社の森から採取したKADOYA1を含む複数株の野生酵母ブレンドが担い、増殖速度もエタノール耐性も異なる株の分業によって、単一株では出せない発酵の幅を確保する。チラーは使わず26°CでKOし、樽の温度変化に発酵を委ねた。

木樽の上部につけたエアロックから排出される気体の勢いが緩やかになる頃合いを見て、発酵7日目にNelson Sauvinを200gドライホップ。10日目にステンレスタンクへ移送した。
酵母が沈み、清澄が進んだ段階で、Hennessy VS、アロマティックビターズ、オレンジビターズを加えた。40%のスピリッツを打ち込む瞬間、液面あたりには高濃度のエタノール層ができるはずだが、撹拌でどこまで均一化できたかは目測に頼るほかなかった。

ビターズの量は高橋氏より助言をいただいた。
カクテルレシピにおいてはヘネシー30mlに対しビターズは0.5mlから1mlが常道である。ところが氏はアンゴスチュラを0.34mlまで引くことを提案した。

ヘネシーのカクテルではあるがビールカクテルであることが今回の肝であり、ホップを天然のビターズとも捉えることができる、というのが理由だった。
この見立ては検証に値する。本作のIBUは22、イソα酸換算で約22mg/Lにあたり、苦味閾値6〜8mg/Lの2倍を超える。目標とする最終比重は1プラートで、達成できていれば苦味を覆い隠す甘味のない液になるが、この数字は瓶詰め時点の狙いにすぎず、実測はまだ得られていない。
そもそもホップの苦味と、キニーネのようなビターズの苦味は、舌の別の受容体が受け取っている。量で素直に置き換えられる関係ではないのだ。HigginsとHayesは2020年、強度を揃えたホップとキニーネの苦味を、被験者が有意に識別できる一方で、その違いを言葉にはできないことを示した。

残る問題は炭酸だった。高橋氏のカクテルでは、シャンパンあるいはソーダが注がれる。本作にシャンパンは入らない。代わりに入るのは、シャンパンの製法のほうだ。
瓶詰めの段でプライミングシュガーとともにシャンパン酵母を添加し、瓶内で二次発酵させる。シャンパンを注ぐ代わりに、シャンパンを生み出す手つきのほうを、瓶の中へ移植した。

ここには断絶がある。発酵由来のアルコール分は約6.6%。そこへ40%のコニャックが全体の7%ほど加わり、アルコール分は9%近くまで押し上がる。

エタノールは酵母の細胞膜を乱すカオトロピック物質であり、膜を締め直して適応するには時間を要する。加えて、清澄化を経た液に残る野生酵母はもともと少ない。樽底に沈む酵母は1mlあたり十億個の規模だが、引き上げた液中はせいぜい数十万から数百万個程度まで薄まるのが通例で、瓶内二次発酵に必要な細胞数を確保できるかは、確実ではない。
だからシャンパーニュの瓶内起泡(prise de mousse)のために選抜されてきた酵母へ、バトンを渡す。伊勢の森の酵母が樽で骨格を作り、シャンパーニュの酵母が瓶で泡を立てる。
瓶詰めの直前に確認したかぎり、バランスを崩す突出した要素はひとつもなかった。苦味はパチッと立ち、もたつきはない。コニャックも果汁もホップも、それぞれの輪郭を保ったまま並んでいた。
ただし、あの液はまだ炭酸を持っていなかった。

この原稿を書いている時点で、瓶内二次発酵はまだ続いている。コニャックを打ち込まれた液の中で、瓶の泡を託されたシャンパン酵母がいまどう働いているのか、栓を開けるまで我々にもわからない。瓶詰めの日に確かめたあのバランスは、いま、瓶の中で静かに書き換えられている最中だ。
グラスに注ぐと、オレンジとアンゴスチュラのビターズの華やかな香りと、白ブドウとバナナを思わせる香りが立つ。そのうしろから、コニャックのバニラと樽の甘い余韻がゆっくり重なってくる。ビターズはホップの苦味と混じり、パチッと立ち、もたつきがない。野生酵母由来のわずかなフェノール香が、白ブドウの酸とコニャックのあいだを繋ぐ。
最終的なアルコール分、炭酸ガス容量、pHは、瓶内二次発酵の完了を待って測定する。いずれも現時点では未確定だ。前例のない設計であり、瓶ごとの個体差は避けられない。試験的なバッチゆえ提供機会も限られる。ご理解いただきたい。

ここで少し、この一本をどこに置きたいのかを書いておきたい。
この夏、アメリカのクラフトビールシーンを見てきた。目を引いたのは、ビールの外側へ踏み出す動きだった。DeschutesはParty Bombという「モルトビバレッジ」を今年リリースしていた。聞き慣れない言葉だが、要は麦芽由来のアルコールでつくる酒、という意味合いだ。ノンアルコールビールを製造する過程で二次的に生まれる高濃度のアルコールに、フルーツジュースを合わせる。日本でいうチューハイに近いRTDだった。pFriemは、バレルエイジプログラムで積み上げてきた多様なビールの経験を土台に、タップカクテルをつくっていた。
若い世代にとって、クラフトビールが以前ほど魅力的でなくなっているのは、正直に言えば寂しい。だが同時に、こうして新しいカテゴリーが生まれていく光景は、素直に面白いと思った。我々も、これを隣の畑の話だとは思っていない。ビールの世界にとどまらず、他の酒類とのクロスオーバーに、積極的に取り組んでいきたい。もちろんその中で、ビールの要素を活かし、これまで積み上げてきた経験を注ぎ込む。我々にしかできない、面白いものづくりがしたいのだ。

KADOLABO 039 French 5³ meets beerは、構成としてはリキュールとビールのクロスオーバーだ。そこへカクテルの発想をふんだんに持ち込んだことで、いわゆるフルーツビールやハーブ&スパイスビールには出せない、多層的な味わいにたどり着いた。こうした共創の機会をいただけることは、本当に楽しく、ありがたい。

最後に、このカクテルを我々に託し、設計において多大なるサポートをしていただいた高橋大地氏、そして両者を引き合わせてくれた今井泰智氏に厚く御礼を申し上げる。
瓶内二次発酵の末の答え合わせは、どうか、あなた自身の舌でしてほしい。

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